追跡ドキュメント〜クロマグロ

  クロマグロ-Vol.1  
 
1-陸上で泳ぐまぐろたち

 
 

水野バイヤー打合せ東海大に着くと、大学生たちがキャンパスで、部活の勧誘をしていた。春の風が気持ちいい。サッカーをしている選手の声がその風に乗って心地よく聞こえてくる。学校という特有の空気が、大人のストレスを忘れ去らせてくれる。
敷地内に車を止めて、まぐろの養殖を研究しいてる校舎へと向かった。出迎えてくれたのは、WHA株式会社の山本明人専務と、所長の廣川さん。それと、事務をしている山本専務の奥様。広い研究室の中にモニターがあり、まぐろが泳いでいるのを監視していた。

当社鮮魚部は、以前、近畿大学の養殖まぐろを仕入れ、解体ショーで話題を呼んだことがある。それと同時期に、まぐろの漁獲量の削減で、日本中がまぐろの高騰を大きく取り上げた。 そんな時に、水野バイヤーの耳に今回のまぐろの陸上養殖の話が入ってきたのだ。

実は、山本専務と水野バイヤーは、高校時代の同級生でもあり、話は早かった。まぐろという魚は、習性で、泳いでいないと死んでいしまうそうで、養殖をするのには、困難な魚と言われている。ましてや、陸上での養殖であり、最も大きなクロマグロである。山本氏は、この困難な養殖をぜひ手掛けてみたいという夢を、東海大学水産学科秋山信彦教授に持ちかけた。秋山教授は、水産生物の増殖および養殖を専門とし、マダイやヒラメの養殖を通じて、地元清水の豊富な「地下海水」の活用法も研究していた。

「まずは、正しい飼い方を知りましょう」と東海大学の敷地内に、直径5mのまぐろの水槽を4基作り、高知県沖で捕獲した体調約20cmのクロマグロの稚魚を約120尾搬入して、試験飼育を開始し、基礎データを取り始めた。秋山教授が加わったことで、さまざまな問題がクリアされていった。 当初は、「実験半ばで、全滅するかも」と厳しい見通しを持っていたが、実験3ヶ月目には、約60尾のまぐろが、体長50〜60cmに達していた。その後も、大半が健康に生き残り、実験終了まで飼育データを提供し続けた。

 
  養殖場内の風景  

 

 

育った幼魚4基の水槽は、研究室横に作られていた。頑丈な扉の中に入り、さらに厚い幕で覆われた中に、水槽があった。まぐろは日光に弱いそうだ。中に入ると、本物のクロマグロが悠々と泳いでいる。勢いよく、元気に水槽の中を回遊していた。

陸上でのメリットは、海底汚染や水質汚濁や、台風、赤潮の影響がなく育てられること。これに成功すれば、安心安全なまぐろがいつでも食べられるのだ。 出荷のメドは、2010年。成功すれば日本初・・・いや世界初である。 青春時代を共にした山本氏の壮大なロマンに、水野バイヤーも一緒に賭けることを誓い合った。

つづく

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